空疎世界の箱庭

気赴くまま。ゆっくりと物語を紡ぐ、そんなブログ

台風の目は気づかない

暗い、暗い、外。

雨が振り、
風が吹き荒れ、

草木を揺らす。


その中で、
ぽつりと、佇む少女は1人。



「あたたかい」



そう呟いた。


雨に打たれている。
風に吹かれている。


フードを被る、
その少女の顔は見えない。


雨は、止まない。
風は、止むことをしらない。


誰もいない。
商店街の出店は、
既にシャッターを閉めている。


深夜。
夜。

雨は打ち付けるほど。
風はいっそう荒れる、強まる。

無人の街。
無人のように見える街。

少女は、歩く。


台風の目は、
少女の存在をしらない。

その目は、
少女の存在に気づくことはない。


「んふふ」


気が付かない。
少女の手が赤く塗れていても、
少女の持つ刃が赤く染まっていても


少女が、

この世界にいなくても。